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6-5

6-4で得られた解の物理的性質を考察せよ。

6-5解答

関数$ g(R-ct)$は時刻$ t=0$での形$ g(R_0)$が、 時刻$ t$では $ g(R_t-ct=R_0),R_t=R_0+ct$で実現されることから、 $ g(R-ct)$は動経方向正の方向に速度$ c$で伝搬する波を表している。 関数$ h(R+ct)$は同様にして、動経方向負の方向に速度$ c$で伝搬する波を表している。 又振幅が$ 1/R$に比例して落ちるのは、 波のエネルギーが$ 1/R^2$に比例し、球の表面積が$ R^2$に比例することを考えると、 エネルギー保存則を表していることがわかる。

二つの解について考える。 以下、中心にdelta関数的な電荷があり、中心以外で空間は真空である場合で考える。 電荷の作る波は外向きに進む波だけであると仮定すると、電磁波は電荷の運動で起きるので、波は中心から外向きに進行すると考えるのが普通である。 電荷が動き出す前に無限遠から球面波がやって来て、 電荷が動き始める時に丁度中心に到着すると考えるのは寧ろ奇妙である。 このような解も可能ではあるが、 経験によると電荷が加速されると電磁波が電荷から外へ出ていく。

Maxwell方程式はその形から明らかに時間反転に対して不変であるから、 どちらの可能性も許すが、経験的事実に基づいて、 外向きの波の解だけが「物理的に意味がある」ということになる。

著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp