5 平均粒子数[Fermi-Dirac 統計]

Gibbs 因子を用いて、ある量子状態 $ j$ を粒子が占める平均粒子数 $ \bar{n}\left(\epsilon_j\right)$ を求める。 $ \bar{n}\left(\epsilon_j\right)$

$\displaystyle \bar{n}\left(\epsilon_j\right) = \frac{\sum_n nP_j\left(n\right)}...
...on_j-\mu)} \left\{\ln \sum_n \exp\left[-\beta(\epsilon_j-\mu)n\right] \right\}
$

と書くことができるので、フェルミ粒子の場合条件 $ n=0 \,\, {\rm or}\,\, 1$ より

$\displaystyle \sum_n \exp\left[-\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)n\right]= 1+ \exp\left[-\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)\right]
$

であるから結局、

$\displaystyle \bar{n}_F\left(\epsilon_j\right) = \frac{\exp\left[-\beta\left(\e...
...\epsilon_j-\mu\right)\right]} =\frac{1}{e^{\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)}+1}$ (10)

となる。同様にボーズ粒子の場合 $ n=0,1,2,\dots$ であるから、 $ \epsilon_j-\mu>0$ とすると $ \exp\left[-\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)\right]<1$ であるから

$\displaystyle \sum_n \exp\left[-\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)n\right]= 1+ \e...
...\right] +\dots
=\frac{1}{1-\exp\left[-\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)\right]}
$

となり、結局

$\displaystyle \bar{n}_B\left(\epsilon_j\right) = \frac{\exp\left[-\beta\left(\e...
...\epsilon_j-\mu\right)\right]} =\frac{1}{e^{\beta\left(\epsilon_j-\mu\right)}-1}$ (11)

が得られる。 これを使えば、系に含まれる粒子数の平均値 $ \bar{N}$ は、(1) に対応して

$\displaystyle \bar{N}=\sum_{j=1}^\infty \bar{n}\left(\epsilon_j\right)$ (12)

で与えられ、系のエネルギーの平均値は、(4) に対応して

$\displaystyle \bar{E}=\sum_{j=1}^\infty \epsilon_j\,\bar{n}\left(\epsilon_j\right)$ (13)

で与えられることになる。 ここでは量子状態が離散的であると考えている。

さて、量子力学によれば、自由粒子の場合、 位相空間中の微小体積 $ d^3\vec{x}\,d^3\vec{p}=dV \, 4\pi p^2 \,dp$ に含まれる状態数は

$\displaystyle g \frac{d^3\vec{x}\,d^3\vec{p}}{h^3}=g \frac{dV \, 4\pi p^2 \,dp}{h^3}$ (14)

で与えられる。 ここで $ h$Planck 定数 であり、 $ g$内部自由度などに起因する統計的重み、または縮退度である。 これを使えば、量子状態 $ j$ の分布が十分稠密であるとして(従って、離散的量子状態を連続的であるとして良いとして)、 (12)や(13) の和を積分で置き換えることができる。 以下では、エネルギー $ \epsilon_j \to \epsilon $ を持つ状態を占める平均粒子数を Fermi 粒子の場合

$\displaystyle \bar{n}_F\left(E\right) = \frac{1}{\exp\left(\alpha +\beta \epsilon \right)+1}$ (15)

と書くことにする。 ここで、パラメータ $ \alpha $ は化学ポテンシャル $ \mu$ $ \alpha =-\beta \mu$ で関係している。 (15) は、相対論的な自由粒子のエネルギー $ \epsilon $ の代わりに

$\displaystyle \epsilon = \sqrt{\left(mc^2\right)^2 +\left(\vec{p}c\right)^2} =mc^2 +\epsilon'
$

で定義される $ \epsilon'$ を使えば

$\displaystyle \bar{n}_F\left(\epsilon'\right) = \frac{1}{\exp\left(\alpha'+\beta \epsilon'\right)+1}$ (16)

と書くこともできる。 ここで、非相対論の極限で $ \epsilon' = \epsilon - mc^2 \to \vec{p}^2/2m$ となるから、 $ \epsilon'$静止エネルギーを差し引いた粒子の運動エネルギーと解釈できる。 また、 $ \alpha' = \alpha +\beta mc^2$ であり、 $ \alpha' = -\beta \mu'$ とすれば、 $ \mu = \mu' +mc^2$ であるから、 $ \mu'$静止エネルギーを除いた化学ポテンシャルと考えることができる。 要するに、 $ \left(\epsilon ,\mu\right)$ を用いても $ \left(\epsilon',\mu'\right)$ を用いても、 $ \bar{n}_F$ は同じ形に書ける。

運動量が $ p$$ p+dp$ との間にある粒子の数密度 $ n(p)$

$\displaystyle n(p)\,dVdp =\bar{n}_F(\epsilon ) \, \frac{g \, dV \, 4\pi p^2}{h^3}
$

であるから

$\displaystyle n(p)= \bar{n}_F(\epsilon ) \,g\,\frac{4\pi p^2}{h^3}$ (17)

で定義される。 一般に化学ポテンシャル $ \mu$ は、粒子数密度 $ n_0$ と温度を与えれば形式的には(2) から

$\displaystyle n_0 = n_0\left(\mu,T\right)$ (18)

$ \mu$ について解いて、粒子数密度 $ n_0$ と温度 $ T$ の関数として求められる。

fat-cat 平成16年11月28日