3 気体が「完全」縮退している場合

$ \alpha = -\mu/kT \to -\infty$ の極限は、気体が縮退している状態に対応する。 実際、粒子一個当たりの熱エネルギー $ kT$ が化学ポテンシャル $ \mu > 0 $ に比べて小さいとき、 $ \alpha+\beta \epsilon =-\beta (\mu-\epsilon )$ であるから $ \epsilon =\mu$ の極近傍を除いては、 $ \epsilon > \mu$ のとき $ \exp\left[-\beta (\mu-\epsilon )\right] \gg 1$、 そして $ \epsilon < \mu$ のとき $ \exp\left[-\beta (\mu-\epsilon )\right] \ll 1$ として良いであろう。 従って $ \epsilon_{\rm Fermi}=\epsilon_f =\mu$ とすれば(10) に於いて

$\displaystyle \epsilon \leq \epsilon_f\,\,\,のとき\,\,\, \bar{n}(\epsilon )=1、\epsilon > \epsilon_f\,\,\,のとき\,\,\,\bar{n}(\epsilon )=0$ (29)

が成り立つ。 このような縮退の状態を完全縮退という。 $ \epsilon_f$Fermi エネルギーと呼ばれる。 非相対論的気体の場合、Fermi 運動量 $ p_f$ と Fermi エネルギーとの関係が $ \epsilon_f = p_f^2/2m$ で与えられるとすれば、 (29)は

$\displaystyle p \leq p_f\,\,\,のとき\,\,\, \bar{n}(\epsilon(p))=1、\epsilon > p_f\,のとき\,\bar{n}(\epsilon(p))=0$ (30)

が成立する。

$ P$ を計算すると

$\displaystyle P$ $\displaystyle =P(\alpha,T)=\frac{1}{3}\int_0^\infty p\frac{p}{m}\bar{n}_F(\alph...
...{h^3}\,dp =\frac{8\pi}{3mh^3} \int_0^{p_f}{p^4} \,dp = \frac{8\pi}{15mh^3}p_f^5$    

であり、このとき(2) より

$\displaystyle n_0$ % latex2html id marker 2545
$\displaystyle =\int_0^\infty \bar{n}_F(\alpha') \,g...
...\pi}{3h^3}p_f^3 \qquad \therefore \,p_f=\left(\frac{3h^3}{8\pi}n_0\right)^{1/3}$    

となるので

$\displaystyle P=\frac{8\pi}{15 mh^3}p_f^5 =\frac{8\pi}{15 mh^3}\left(\frac{3h^3}{8\pi}n_0\right)^{5/3}$ (31)

となり、先に完全縮退非相対論的場合を考察した通り、 圧力は粒子密度だけで決まり、式中に温度 $ T$ が入っていないことが分かる。

fat-cat 平成16年11月28日