招待講演 (invited talk)
上から順に、名前、所属、研究分野、講演テーマ、講演日時、webpage
from top to buttom, name, affiliation, reserch activity, subject of talk, talk date and time, webpage
藤井 通子 氏(Michiko Fujii)
-
鹿児島大学 --> ライデン観測所(オランダ)
Kagoshima Univ --> Leiden Observatory (Netherlands)
-
N体計算を用いた銀河の衝突・合体や衛星銀河の降着などのシミュレーション
N-body simulations of evolution of star clusters and satellite galaxies within galaxies
-
N体シミュレーションで何ができるか?(と海外でポスドク生活2年目)...(click here)
N体シミュレーションは粒子間の重力を計算し各粒子の軌道の時間発展を
計算していく非常にシンプルなシミュレーションである。
その適用範囲は広く、惑星、星団、ブラックホール、銀河、
宇宙の大規模構造と様々なスケールで用いられており、
それぞれに合わせた計算方法が開発されてきた。
近年では計算機の発達に伴い、
例えばGraphics Processing Unit (GPU) などの利用によって、
以前と比べると誰でもお手軽にシミュレーションが行えるようになったと言える。
また、スーパーコンピュータを用いた大規模な(=粒子数の多い)シミュレーションが次々と行われるようになった。
しかし、粒子数が増えて分解能が上がると、より高密度な領域まで分解できるようになり、
その結果、計算に必要なコストは増加する。そのため、
より高分解能の大規模なシミュレーションを行うには、
単にたくさんのコンピュータを用意すれば良いのではなく、
それらを効率的に使うための新しいアルゴリズム開発が必要となってくる。
また、GRAPEやGPUなどのアクセラレータの利用もN体シミュレーションを行う上での重要な課題である。
本講演では、近年のN体シミュレーションが何を乗り越えて来て、これから何を乗り越えなければならないか、
具体的なシミュレーションの例と共に紹介する。
また、海外(オランダ)での1年間のポスドク生活についても紹介する。
-
8/1(Mon.) 17:30 - 18:30
-
webpage
滝沢 元和 氏(Motokazu Takizawa)
-
山形大学
Yamagata Univ
-
銀河団の進化や高エネルギー現象、観測的宇宙論、数値シミュレーション
Evolution of galaxy clusters, high energy phenomena in galaxy clusters, observational cosmology and numerical simulation
-
多波長観測で探る銀河団高温プラズマ、高エネルギー粒子、暗黒物質...(click here)
銀河団は宇宙で最大規模の自己重力系で、現在も周囲の物質を降着したり、小銀河群を吸収しながら成長している。
その姿は様々な波長の観測によって明らかにされつつある。
今回の講演では、どのような観測手段で銀河団のどのような側面が明らかになるのかを紹介し、
明らかになってきた銀河団の動的な側面、および構造形成を通じた宇宙論との関係について議論したい。
銀河団でのバリオンの大部分は温度が1-10keV程度の高温プラズマとして存在している。
これはX線で観測され、ガスの物理状態や化学組成についての情報を与えてくれる。
さらに最近では高温ガスがCMB光子を逆コンプトン散乱するスニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の観測も
可能になりX線とは相補的な情報を与えてくれると期待される。
その一方で、GeV程度の高エネルギー電子やマイクロガウス程度の磁場のような非熱的な成分の存在が
主に電波観測によって明らかになっており、将来的には硬X線やガンマ線観測によってさらに
高エネルギーな粒子の世界を見ることができるかもしれない。
このような粒子加速現象は高温プラズマの運動と密接に関連があると考えられているが不明な点も多い。
銀河団の質量の大部分を担う暗黒物質は、高温ガスや銀河の運動から間接的に存在をうかがいしるだけであったが、
重力レンズ効果の観測により直接情報を得られるようになってきている。
その結果、高温ガスと暗黒物質の分布の違いも見つかってきており、
系の力学状態や暗黒物質の性質について重要な情報を与えてくれる。
銀河団のような大規模な構造の形成過程は宇宙論に依存する。
したがって、銀河団の様々な統計的性質をつかって宇宙論の情報を得ることが原理的には可能である。
そのような試みの結果と、銀河団自体の理解が不十分なために起こりうる問題点についても紹介したい。
-
8/2(Tue.) 17:30 - 18:30
-
webpage
柏川 伸成 氏(Noburari Kashikawa)
-
国立天文台
NAOJ
-
すばる望遠鏡を用いた遠方宇宙の観測的研究
Observational studies of distant universe using Subaru telescope
-
もし高校野球の女子マネージャーがHSCやTMTで宇宙を覗いたら...(click here)
あの華やかで騒々しかった祭りもそろそろ終焉に差し掛かっている。
90年代に始まったHST, Keck, そしてすばるなどの最先端技術を兼ね備えた望遠鏡たちの賑やかな競演によって、
遠方宇宙のフロンティアはさらに拡大されていった。
銀河進化の黎明期の様子は次々と明らかになり、
われわれは観測結果を基に初期宇宙への想像を甘受する暇さえ与えられなかった。
もちろん祭りはまだ続いている。
今でもastro-phを読むと、胸の奥がキュンと痛くなるような論文に出会うことがないわけではない。
でも、夏の終わりに、セミたちの鳴き声が懐かしく耳に残っているように、
突然の夕立にどこまでも青かった海を思い出したりするように、
1つの季節の終わりを感じているのは何も私だけではないであろう。
論文の最後のDiscussionにJWSTやELTの名前を目にすることが最近多いのは偶然だとは思えない。
これは、われわれの単純な好奇心、例えば、宇宙で最初の星はどうやってできたんだろう、
再電離はどのように進んだんだろう、といった根本的な疑問が、今の時代には解決されないことを知ってしまったから、
なのかも知れない。
あの頃のときめきを忘れないうちに、いや、あの頃のときめきをもう一度感じたくて、
われわれは次のチャレンジに向かおうとしている。
かくいうわれわれの世代も、すばるができるまではこのような時代の訪れを、ある種の予感でしか感じていなかった。
チャレンジして初めてわかった真理が多かったのだ。
宇宙はわれわれの想像や予感を超えて素晴らしく、面白く、そして美しい。
来るべき次の祭りに備えて今から充分に予感を膨らませていただきたい。
そして数年後には、その予感がゆっくりとしかし着実に、いい意味で裏切られ、
みなさんのときめきが最高潮に達することを願っている。
-
8/3(Wed.) 14:30 - 15:30
-
webpage
Kagoshima Univ --> Leiden Observatory (Netherlands)
N-body simulations of evolution of star clusters and satellite galaxies within galaxies
N体シミュレーションは粒子間の重力を計算し各粒子の軌道の時間発展を
計算していく非常にシンプルなシミュレーションである。
その適用範囲は広く、惑星、星団、ブラックホール、銀河、
宇宙の大規模構造と様々なスケールで用いられており、
それぞれに合わせた計算方法が開発されてきた。
近年では計算機の発達に伴い、
例えばGraphics Processing Unit (GPU) などの利用によって、
以前と比べると誰でもお手軽にシミュレーションが行えるようになったと言える。
また、スーパーコンピュータを用いた大規模な(=粒子数の多い)シミュレーションが次々と行われるようになった。
しかし、粒子数が増えて分解能が上がると、より高密度な領域まで分解できるようになり、
その結果、計算に必要なコストは増加する。そのため、
より高分解能の大規模なシミュレーションを行うには、
単にたくさんのコンピュータを用意すれば良いのではなく、
それらを効率的に使うための新しいアルゴリズム開発が必要となってくる。
また、GRAPEやGPUなどのアクセラレータの利用もN体シミュレーションを行う上での重要な課題である。
本講演では、近年のN体シミュレーションが何を乗り越えて来て、これから何を乗り越えなければならないか、
具体的なシミュレーションの例と共に紹介する。
また、海外(オランダ)での1年間のポスドク生活についても紹介する。
Yamagata Univ
Evolution of galaxy clusters, high energy phenomena in galaxy clusters, observational cosmology and numerical simulation
銀河団は宇宙で最大規模の自己重力系で、現在も周囲の物質を降着したり、小銀河群を吸収しながら成長している。
その姿は様々な波長の観測によって明らかにされつつある。
今回の講演では、どのような観測手段で銀河団のどのような側面が明らかになるのかを紹介し、
明らかになってきた銀河団の動的な側面、および構造形成を通じた宇宙論との関係について議論したい。
銀河団でのバリオンの大部分は温度が1-10keV程度の高温プラズマとして存在している。
これはX線で観測され、ガスの物理状態や化学組成についての情報を与えてくれる。
さらに最近では高温ガスがCMB光子を逆コンプトン散乱するスニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の観測も
可能になりX線とは相補的な情報を与えてくれると期待される。
その一方で、GeV程度の高エネルギー電子やマイクロガウス程度の磁場のような非熱的な成分の存在が
主に電波観測によって明らかになっており、将来的には硬X線やガンマ線観測によってさらに
高エネルギーな粒子の世界を見ることができるかもしれない。
このような粒子加速現象は高温プラズマの運動と密接に関連があると考えられているが不明な点も多い。
銀河団の質量の大部分を担う暗黒物質は、高温ガスや銀河の運動から間接的に存在をうかがいしるだけであったが、
重力レンズ効果の観測により直接情報を得られるようになってきている。
その結果、高温ガスと暗黒物質の分布の違いも見つかってきており、
系の力学状態や暗黒物質の性質について重要な情報を与えてくれる。
銀河団のような大規模な構造の形成過程は宇宙論に依存する。
したがって、銀河団の様々な統計的性質をつかって宇宙論の情報を得ることが原理的には可能である。
そのような試みの結果と、銀河団自体の理解が不十分なために起こりうる問題点についても紹介したい。
NAOJ
Observational studies of distant universe using Subaru telescope
あの華やかで騒々しかった祭りもそろそろ終焉に差し掛かっている。
90年代に始まったHST, Keck, そしてすばるなどの最先端技術を兼ね備えた望遠鏡たちの賑やかな競演によって、
遠方宇宙のフロンティアはさらに拡大されていった。
銀河進化の黎明期の様子は次々と明らかになり、
われわれは観測結果を基に初期宇宙への想像を甘受する暇さえ与えられなかった。
もちろん祭りはまだ続いている。
今でもastro-phを読むと、胸の奥がキュンと痛くなるような論文に出会うことがないわけではない。
でも、夏の終わりに、セミたちの鳴き声が懐かしく耳に残っているように、
突然の夕立にどこまでも青かった海を思い出したりするように、
1つの季節の終わりを感じているのは何も私だけではないであろう。
論文の最後のDiscussionにJWSTやELTの名前を目にすることが最近多いのは偶然だとは思えない。
これは、われわれの単純な好奇心、例えば、宇宙で最初の星はどうやってできたんだろう、
再電離はどのように進んだんだろう、といった根本的な疑問が、今の時代には解決されないことを知ってしまったから、
なのかも知れない。
あの頃のときめきを忘れないうちに、いや、あの頃のときめきをもう一度感じたくて、
われわれは次のチャレンジに向かおうとしている。
かくいうわれわれの世代も、すばるができるまではこのような時代の訪れを、ある種の予感でしか感じていなかった。
チャレンジして初めてわかった真理が多かったのだ。
宇宙はわれわれの想像や予感を超えて素晴らしく、面白く、そして美しい。
来るべき次の祭りに備えて今から充分に予感を膨らませていただきたい。
そして数年後には、その予感がゆっくりとしかし着実に、いい意味で裏切られ、
みなさんのときめきが最高潮に達することを願っている。