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1-2-(f)

円偏光に対するここまでの結果を用いて、無偏光の電磁波に対する微分散乱断面積、及び全散乱断面積を求めよ。又、散乱波が$ \va_1$方向に直線偏光しており、偏光度が $ (1-\cos^2\theta)/(1+\cos^2\theta)$であることを示せ。

1-2-(f)解答

左回り円偏光、右回り円偏光の電磁波間で$ \delta$$ \pi$だけ違うので、右回りの電磁波の場合Eq.(9)より

$\displaystyle {\vE}_{\rm rad} = \frac{e^2E_0}{m_e Rc^2}\left[ \va_1\, \cos\omega_0 t + \va_2 \,\cos\theta \cos\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right) \right]$ (26)

となることが容易に分かる。この結果から微分散乱断面積がEq.(23)となることが分かる。この時Stokes parametersは

$\displaystyle I_{\rm r}= I_{\rm l} ;\quad Q_{\rm r} = Q_{\rm l} ;\quad U_{\rm r} = U_{\rm l} = 0 ;\quad V_{\rm r} = -V_{\rm l}$ (27)

となり、偏光度$ \Pi$

$\displaystyle \Pi_{\rm r} = 1$ (28)

無偏光の散乱は、分解した左回りの円偏光と右回りの円偏光それぞれの散乱波の非可干渉な重ね合わせである。よって無偏光の電磁波の散乱断面積は、それぞれの結果を足し合わせて弐で割ったものであり、Eq.(23)に一致する。 全散乱断面積は積分を実行して

$\displaystyle \sigma_T = \frac{r_0^2}{2}\int \left(1+\cos^2\theta\right)d\Omega =\frac{8\pi}{3}r_0^2 =0.665245873 \times 10^{-24}\,[{\rm cm^2}]$ (29)

となる。以上は完全偏光のときと同じ結果であるが、これはもともと静止した電子には特別な方向は存在しないことから、どんな方向に偏光した電磁波に対しても同じ様に散乱することを反映した結果である。 無偏光の電磁波の電子による散乱波のStokes parametersは、

$\displaystyle I_{\rm u}$ $\displaystyle = \frac{1}{2} \left( I_{\rm r} + I_{\rm l}\right) = I_{\rm l} = I_{\rm r}$ (30)
$\displaystyle Q_{\rm u}$ $\displaystyle = \frac{1}{2} \left( Q_{\rm r} + Q_{\rm l}\right) =Q_{\rm l} =Q_{\rm r}$ (31)
$\displaystyle U_{\rm u}$ $\displaystyle = \frac{1}{2} \left( U_{\rm r} + U_{\rm l}\right) =0$ (32)
$\displaystyle V_{\rm u}$ $\displaystyle = \frac{1}{2} \left( V_{\rm r} + V_{\rm l}\right) =0$ (33)

となる。従って無偏光の電磁波の散乱波は直線偏光している。 非可干渉な波の重ね合わせであるので、振幅が卓越している成分方向に直線偏光する。 今$ \va_1$成分が常に大きいので、$ \va_1$方向に直線偏光している。 この時、偏光度は

$\displaystyle \Pi_{\rm u} = \frac{\sqrt{Q_{\rm u}^2+U_{\rm u}^2+V_{\rm u}^2}}{I_{\rm u}} =\frac{1-\cos^2\theta}{1+\cos^2\theta}$ (34)

となる。

著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp