次のサブセクションで必要になる鞍点法についてまとめておく。
複素平面上の経路積分の値
を近似的に求めることを考える。
ここで と は複素平面上の解析関数であり、
積分経路はその両端に於いて の実部が負の無限大となり、
積分の被積分関数が零になるように選べるか、
あるいは閉曲線に選べるものとする。
と書くとき、
もし実部が複素平面上のある点 で極大値をとるとすれば
であり、従って
となる。
ところが解析関数について Cauthy-Riemann の関係式から
が成り立つので、
点 で例えば
(上に凸)のときは、
(下に凸)となるので、
この極大値は絶対的な極大値ではなく、
ある経路に沿って得られる極大値であるにすぎず、
点 は鞍点(saddle point) になっている。
従って、積分を実行するに当たって必要なのは、
- が鞍点に於いて極大となるような
- 鞍点の近傍で虚部 が一定
となるように経路を選択する必要がある。
このように積分経路を選ぶことは、
鞍点 近傍の経路を
で与えるとき(ここで と は実数)、関数 の
|
(97) |
なる展開に於いて
が負の実数になるよう位相 を選ぶことに対応する。
このとき実数 を
を満たすように定義すれば、
が得られ、
これを新しい変数として使えば、
求める積分は
|
(98) |
で与えられる。
ここで、鞍点 の近傍で は十分ゆっくり変化するものとしてる。
極大値が複素平面上に複数あるときは、
積分の近似は(98)の表現の和になる。
fat-cat
平成17年1月10日