2 潮汐力 (Tidal Force)

連星系中の星はもう一方の星の重力場により変形を受ける。 この問題は、 例えば、 月の重力場により地球上の海面が変形を受け、 地球の自転に伴って潮の満ち引きが起こるのと同じ問題である。 今、 星 $ M_2$ の重力により引き起こされる星 $ M_1$ の変形を計算することを考える。 星 $ M_1$ が静水圧平衡にあるから

$\displaystyle {\bf\nabla} p = -\rho {\bf\nabla}\Phi$ (17)

が成り立つとする。 ここで、

$\displaystyle \Phi_1 +\Phi_2 =\Phi
$

であり、 $ \Phi_1$ は星 $ M_1$ の自己重力ポテンシャルであり、 星 $ M_1$ の密度分布とポワッソンの式により

$\displaystyle {\bf\nabla}^2 \Phi_1 = 4\pi G \rho$ (18)

で結びついている。 $ \Phi_2$ は星 $ M_2$ の自己重力ポテンシャルであり

$\displaystyle \Phi_2 =-\frac{GM_2}{\left\vert{\bf r}-{\bf a}\right\vert}$ (19)

で与えられる。 ここで座標原点は星 $ M_1$ の中心にとってあり、 $ {\bf r}$ は星 $ M_1$ 内の点の位置ベクトルであり、 $ {\bf a}$ は星 $ M_2$ の位置ベクトルである。 このポテンシャルは $ {\bf r} =\left\vert{\bf r}\right\vert < a=\left\vert{\bf a}\right\vert$ として展開すれば

$\displaystyle \Phi_2 = -\frac{GM_2}{a} \left[ 1+\frac{r}{a} P_1(\cos\theta) +\frac{r^2}{a^2} P_2(\cos\theta)+\dots \right]$ (20)

が得られる。 ここで $ P_n(\cos\theta)$ルジャンドル多項式であり、 $ \theta$$ {\bf r}$$ {\bf a}$ と成す角度である。 低次のルジャンドル関数は以下の通りである。

$\displaystyle P_0 (\cos\theta)$ $\displaystyle =0$    
$\displaystyle P_1 (\cos\theta)$ $\displaystyle =\cos\theta$    
$\displaystyle P_2 (\cos\theta)$ $\displaystyle =\frac{1}{2}\left(3\cos^2\theta -1\right)$    
$\displaystyle P_3 (\cos\theta)$ $\displaystyle =\frac{1}{2}\left(5 \cos^3 \theta -3 \cos\theta\right)$    
$\displaystyle \vdots\hspace{5mm}$ $\displaystyle \hspace{20mm}\vdots$    



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fat-cat 平成16年11月30日