研究課題3
課題名
CMB・大規模構造探査データ:宇宙初期からの密度揺らぎの正規分布からのズレを測定
概要
ビッグバン以前の宇宙を探る
宇宙の歴史を遡ると、ビッグバンという火の玉状態の時代があった、というのはどこかで耳にしたことがあるかもしれません。ではもっと遡って、ビッグバンの前にはいったい何があったのかというと、インフレーションという宇宙が急膨張する時代があったと考えられています。インフレーションの時代に、後々銀河など宇宙の構造の種となる揺らぎが作られますが、実は現在の宇宙にも、この初期にできた揺らぎの情報が様々な痕跡として残っています。例えば、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)というものがありますが、これは宇宙が誕生してわずか38万年後に出た光で、137億光年を旅して我々に届いているビッグバンの名残です。この光はインフレーションでできた揺らぎをよく保存していると考えられているので、これまでも盛んに研究がなされており、私もこれまで主にCMBを用いた理論的な研究を行ってきました。また最近の大規模な銀河観測からは、銀河分布の揺らぎから初期宇宙の痕跡を探すことも可能になりつつあります。私は現在この銀河分布の非線形な成分を用いてビッグバン以前の宇宙を探る方法に興味を持って研究をしています。
今回の頭脳循環プログラムで、私は来年度までの約1年間CfAに滞在することになります。受け入れ研究者でもあるDaniel Eisenstein教授は観測的宇宙論において数々の業績を挙げられている方で、現在 Sloan Digital Sky Survey(SDSS)という、銀河を観測して世界最大の宇宙の地図を作る計画のリーダーをされています。まさにこの分野の第1人者です。今回の頭脳循環の研究計画ではこのSDSSのデータを用いて、初期宇宙に作られた非線形性を制限できればと思っています。
自分にとってこれが初めての海外生活で英語が大分不安ですが、ケンブリッジののどかな雰囲気での研究生活を楽しみにしております。これから1年をチャンスとして、有意義に研究に励み、英語もペラペラになって帰ってきたいと思います。
東北大学大学院理学研究科天文学専攻 GCOE助教 新田 大輔