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1-4

温度$ T$で熱運動している電子による逆コンプトン放射強度が、 $ k_B T \ll m_e c^2$の非相対論的極限で

$\displaystyle P_{{\rm Comp}} = \frac{4k_B T}{m_e c^2} c \sigma_T U_{{\rm ph}}$ (14)

で与えられることを示せ。又、この時電子のエネルギー(散乱前で$ \epsilon$)が、散乱で $ \Delta \epsilon$だけ増加したとすると、それらの比の平均値が

$\displaystyle \left\langle \frac{\Delta \epsilon}{\epsilon} \right\rangle = \frac{4k_B T}{m_e c^2}$ (15)

で与えられることを示せ。

1-4解答

問題にあるように $ k_B T \ll m_e c^2$の非相対論的極限で考える。散乱前電子静止系(K'系)では

$\displaystyle \epsilon'_1 \approx \epsilon'\left[ 1-\frac{\epsilon'}{m_e c^2} \left( 1-\cos\Theta \right) \right]$ (16)

であるから、これの角度平均を取り、整理すると

$\displaystyle \frac{\Delta \epsilon'}{\epsilon'} \equiv \frac{\epsilon'_1 -\epsilon'}{\epsilon'} =-\frac{\epsilon'}{m_ec^2}$ (17)

を得る。これをK系に変換する。この際にEq.(17)と同じようになると考えられるが、余分な項が含まれることが推測される。これを $ \alpha k_B T/(m_e c^2)$とすると、

$\displaystyle \frac{\Delta \epsilon}{\epsilon} =-\frac{\epsilon}{m_e c^2} + \frac{\alpha k_B T}{m_e c^2}$ (18)

となる。ここで$ \alpha$は適当な係数である。

今、K系でInverse Compton Scatteringが平衡状態、つまり光子と電子との間でエネルギーのやり取りが行われない下限を考える。 単純に考えるとこれはEq.(18)が零となる条件の様に聞こえるが、実際には様々なエネルギーを持つ光子が存在するので、Eq.(18)をエネルギー平均した上で零、とする必要がある。 下限を考えているので、電子は非相対論的であると仮定し、光子の分布関数はBose-Einstein分布から、近似で

$\displaystyle f_{{\rm BE}} =\frac{1}{e^{\epsilon/(k_B T)}-1} \approx e^{-\epsilon/(k_B T)}$ (19)

の様に書ける。これより $ [\epsilon\sim \epsilon +d\epsilon]$間に存在する光子の数は

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$\displaystyle n = g \int \frac{d^3p}{(2\pi)^3} f(p)...
...on}\,; \quad \therefore\, \di{n}{\epsilon} = A \epsilon^2 e^{-\epsilon/(k_B T)}$ (20)

と書けるので、

$\displaystyle \left\langle \epsilon \right\rangle
=\dfrac{\displaystyle \int \e...
...-x}\, dx}{\displaystyle \int_0^\infty x^2 e^{-x}\,dx}
=12 \left(k_B T\right)^2
$

より、

$\displaystyle \left\langle \Delta \epsilon \right\rangle =\frac{\alpha k_B T}{m...
... \right\rangle}{m_e c^2} =\frac{3 k_B T}{m_e c^2} \left( \alpha -4\right) k_B T$ (21)

を得る。平衡状態であるためには $ \left\langle \Delta \epsilon \right\rangle=0$で無ければならないので、結局 $ \alpha = 4$となる。

以上の結果を踏まえると、非相対論的な場合Eq.(14),(15)となる。

著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp