1 Maxwell 方程式のローレンツ共変性

真空中の Maxwell 方程式をローレンツ変換に対して共変型になるように書き換える。 真空中の Maxwell 方程式は、 電荷 $ q$ 、 電荷密度 $ \rho$ 、 電流密度 $ \vj$ 、 電則密度 $ \vD$ 、 電場の強さ $ \vE$ 、 磁束密度 $ \vB$ 、 磁場の強さ $ \vH$ を使って、

$\displaystyle \Nabla \cdot \vB = 0 , \qquad \del{\vB}{t} + \Nabla \times \vE =0$ (34)

$\displaystyle \Nabla \cdot \vD = \rho , \qquad \Nabla \times \vH -\del{\vD}{t} = \vj$ (35)

と書き表せる(MKS単位系)。 Eq.(34) から明らかなように、 この単位系では $ \vB$$ \vE/c$ とが同じ次元を持つ。 また、 $ \vE$$ \vD$$ \vB$$ \vH$ とが真空の誘電率 $ \varepsilon_0$ と透磁率 $ \mu_0$ とを使って

$\displaystyle \vD = \varepsilon_0 \vE ,\qquad \vB = \mu_0 \vH$ (36)

で結ばれる。 ここで

$\displaystyle \varepsilon_0 \mu_0 =\frac{1}{c^2}
$

である。

さて、 二階の反対称テンソル $ f_{\mu\nu},f^{\lambda\nu}$Maxwell tensor) と四元電流密度ベクトル $ j^\mu$ とを、

$\displaystyle f_{\mu\nu} = \begin{pmatrix}0 & -E_x/c & -E_y/c & -E_z /c   E_x...
...rix},     j^\mu = \begin{pmatrix}c\rho   j_x   j_y   j_z \end{pmatrix}$ (37)

で定義する。

今、

$\displaystyle \del{f_{\mu\nu}}{x^\lambda} + \del{f_{\nu\lambda}}{x^\mu} + \del{f_{\lambda\mu}}{x^\nu} = 0$ (38)

を考える。

$\displaystyle \del{f_{23}}{x^1} + \del{f_{31}}{x^2} + \del{f_{12}}{x^3} = \del{B_x}{x} + \del{B_y}{y} + \del{B_z}{z} = 0
$

より、

$\displaystyle \Nabla \cdot \vB = 0
$

であり、

$\displaystyle \del{f_{23}}{x^0} + \del{f_{30}}{x^2} + \del{f_{02}}{x^3}$ $\displaystyle = \del{B_x}{(ct)} + \del{(-c^{-1}E_z)}{y} + \del{(c^{-1}E_y)}{z} ...
...uad \Longrightarrow \quad \left[ \del{\vB}{t} + \Nabla \times \vE \right]_x = 0$    

であるから、以下同様に

$\displaystyle \del{f_{31}}{x^0} + \del{f_{10}}{x^3} + \del{f_{03}}{x^1} = 0
\quad \Longrightarrow \quad \left[ \del{\vB}{t} + \Nabla \times \vE \right]_y = 0
$

$\displaystyle \del{f_{12}}{x^0} + \del{f_{20}}{x^1} + \del{f_{01}}{x^2} = 0
\quad \Longrightarrow \quad \left[ \del{\vB}{t} + \Nabla \times \vE \right]_z = 0
$

であるので、 Eq.(34) が得られる。

次に

$\displaystyle \del{f^{\lambda\nu}}{x^\nu} = \mu_0 j^\lambda$ (39)

を考える。

$\displaystyle \del{f^{00}}{x^0} + \del{f^{01}}{x^1} + \del{f^{02}}{x^2} + \del{...
...} E_x)}{x} + \del{({-c}^{-1} E_y)}{y} + \del{({-c}^{-1} E_z)}{z} = \mu_0 c\rho
$

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$\displaystyle \therefore   \Nabla \cdot \vD = \rho
$

であり、また

$\displaystyle \del{f^{10}}{x^0} + \del{f^{11}}{x^1} + \del{f^{12}}{x^2} + \del{...
...grightarrow
\quad
\left[\Nabla \times \vH -\del{\vD}{t}\right]_x = \mu_0 j_x
$

であるから、 同様に

$\displaystyle \del{f^{20}}{x^0} + \del{f^{21}}{x^1} + \del{f^{22}}{x^2} + \del{...
...grightarrow
\quad
\left[\Nabla \times \vH -\del{\vD}{t}\right]_y = \mu_0 j_y
$

$\displaystyle \del{f^{30}}{x^0} + \del{f^{31}}{x^1} + \del{f^{32}}{x^2} + \del{...
...grightarrow
\quad
\left[\Nabla \times \vH -\del{\vD}{t}\right]_z = \mu_0 j_z
$

となり、 Eq.(35) が得られる。

Eq.(38) とEq.(39) は Maxwell 方程式をローレンツ変換に対する共変型に書き直したものであり、 任意の慣性系で成立すると考える。 そして一つの慣性系から別の慣性系に移るときは、 テンソルやベクトルはその変換則--ローレンツ変換 -- に従って変換されるものとする。

fat-cat 平成16年11月28日