1 状態密度

始めに状態密度 $ \rho(E')$ を求める。 Eq.(1),Eq.(2) より、

$\displaystyle \bracketi{\psi_f}{\psi_i} = N^2 \int \exp\left[ i\, \frac{(\vp-\vp')}{h}\cdot \vr\right]d^3r
=\frac{(2\pi \hbar)^3}{V}\, \delta(\vp-\vp')
$

であるから、もし $ \vp=\vp'$$ \delta$ 関数に規格化された平面波の場合、状態密度は壱である。 これより区間 $ \left[\vp',\vp'+d\vp'\right]$ に含まれる状態の数は

$\displaystyle \frac{V}{(2\pi \hbar)^3} d^3 p'
$

で与えられることが分かる。 ある立体角 $ {\bf\Omega}$ 方向の運動量を持つ状態を考えると、 これらの状態はエネルギーで区別することができる。 従ってこの状態の密度として $ \rho({\bf\Omega},E')$ を考える。 このとき区間 $ \left[ {\bf\Omega},{\bf\Omega} + d{\bf\Omega}\right]$ に含まれる方向の運動量を持ち、 そのエネルギーが $ \left[E',E'+dE'\right]$ に含まれる様な状態の数は、 $ \rho({\bf\Omega},E')d{\bf\Omega}dE'$ と書くことができる。 $ '$(prime) がついている状態は同じ状態(=散乱後)を表しているので、

$\displaystyle \rho({\bf\Omega},E')\,d{\bf\Omega}dE' = \frac{V}{(2\pi \hbar)^3}\,d^3 p'
$

の関係が成り立つ。$ \vp'$ 空間を極座標で表すと $ d^3 p'= p'^2 dp' d{\bf\Omega}$ より、

$\displaystyle \rho({\bf\Omega},E')\,d{\bf\Omega}dE' = \frac{V p'^2}{(2\pi \hbar)^3}\, dp' d{\bf\Omega}
$

が成り立つ。ここで状態密度は $ {\bf\Omega}$ に依らないので(対称性より。 $ {\bf\Omega}$ に依存したとすると、何らかの非対称性さが存在することになる。)、 $ \rho({\bf\Omega},E') = \rho(E')$ と書ける。 以上より状態密度は、

$\displaystyle \rho(E') = \frac{V p'^2}{(2\pi \hbar)^3}\di{p'}{E'} = \frac{V p'^...
...}\frac{V}{v'},\qquad\because\, \hbox{非相対論の場合より、}\quad dE' = v' \, dp'$    

となる。 これより区間 $ \left[ {\bf\Omega},{\bf\Omega} + d{\bf\Omega}\right]$ の間にある状態密度を $ d\rho(E')$ と書くことにすると、

$\displaystyle \rho(E')d{\bf\Omega} = d\rho(E') = \frac{p'^2}{(2\pi \hbar)^3}\frac{V}{v'}\,d{\bf\Omega}$ (6)

となる。

著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp