原子核による電子の散乱を考える。
陽子は電子よりも約1840倍質量が重いので、原子核は静止しているものとする。
電子の運動方程式は、
![$\displaystyle m_e\di{v_x}{t} = -\frac{Ze^2 x}{r^3},\quad m_e\di{v_y}{t} = -\frac{Ze^2 y}{r^3}$](Rutherford_Scattering_1-img3.png) |
(1) |
と書ける。無限遠方での電子の初速を
、衝突パラメータを
とする。中心力場中での運動であるので角運動量は保存される。
極座標表示を用いて粒子の位置を表すと、方位角
の運動方程式は角運動量保存を用いて
![% latex2html id marker 403
$\displaystyle m_e r^2\dot{\varphi} = - m_e V_0 b, \quad \therefore\, \di{\varphi}{t} = -\frac{V_0 b}{r^2}$](Rutherford_Scattering_1-img7.png) |
(2) |
となる。散乱角を
とすると散乱後の漸近的速度は
と書ける。
Eq.(2)を用いてEq.(1)のx方向の運動方程式を
の微分から
の微分方程式に書き換え、積分を実行すると、
![% latex2html id marker 413
$\displaystyle \int_{V_0}^{V_0 \cos\theta} dv_x = \fr...
...c{m_e V_0^2 b}{Z e^2} = \frac{\sin\theta}{1-\cos\theta} =\cot{\frac{\theta}{2}}$](Rutherford_Scattering_1-img11.png) |
(3) |
を得る。ここで入射電子の無限遠での角度は
であり、散乱後は
であることを用いた。
Eq.(3)より
となるように強く散乱される場合は
が次図のような振る舞いをすることから、
であり、このときの
が満たすべき条件は以下のようになる。
![$\displaystyle b \leq \frac{Ze^2}{m_e V_0^2} ;\quad m_e V_0^2 \leq \frac{Ze^2}{b}$](Rutherford_Scattering_1-img18.png) |
(4) |
図:
|
また
の極限では
となり、電子は元来た方向に跳ね返される。
著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp