3 相対論的Beaming効果

光子のエネルギーや運動量は $ E =\hbar \omega$ $ \vp = \hbar \vk$ とで定義されるので、 その四元運動量ベクトルを

$\displaystyle p^\alpha = \left( \frac{E}{c} ,\vp\right) =\left( \frac{\hbar \omega}{c},\hbar \vk\right) = \hbar k^\alpha$ (10)

で定義する。 Eq.(1) からこれらはローレンツ変換に従うことが分かる。 このとき $ \eta_{\alpha \beta} p^\alpha p^\beta =0$ であるから、

$\displaystyle \frac{E^2}{c^2} = \left\vert\vp\right\vert^2 \quad \hbox{or}\quad
E = c \left\vert \vp\right\vert
$

は明らかである。

粒子の運動を二つの慣性系 $ O$$ O'$ で観測したときの運動の速度を $ \vu$$ \vu'$ と書けば、 速度の変換則は

$\displaystyle u^1 = \frac{u'^1 + v}{1+ {vu'^1}/{c^2}},\quad u^2 = \frac{1}{\gam...
...\frac{u'^2}{1+vu'^1/c^2} ,\quad u^3 = \frac{1}{\gamma} \frac{u'^3}{1+vu'^1/c^2}$ (11)

で与えられる。 これを慣性系間の運動速度 $ \vv$ に平行な成分 $ \vu_{\parallel}$ $ \vu'_{\parallel}$ に垂直な成分 $ \vu_{\perp}$ $ \vu'_\perp$ とに分けて書けば、

$\displaystyle u_\parallel = \frac{u'_{\parallel} + v}{1+ v u'_{\parallel} /c^2},\quad u_\perp = \frac{1}{\gamma} \frac{u'_\perp}{1+ v u'_{\parallel} /c^2}$ (12)

となる。 従って慣性系の $ x$ 軸に対する粒子の方向角の間の関係は

$\displaystyle \tan \theta \equiv \frac{u_\perp}{u_\parallel} =\frac{1}{\gamma} \frac{u' \sin\theta'}{u' \cos\theta' + v}$ (13)

で与えられる。 ここで

$\displaystyle \sin\theta' = \frac{u'_\perp}{u'}, \quad \cos\theta' = \frac{u'_\...
... \left\vert \vu'\right\vert = \left\vert \vu'_\parallel + \vu'_\perp\right\vert$ (14)

である。

さて、ある高速( $ \gamma \gg 1,v/c \sim 1$) で運動している粒子が放射する光子の運動を考える。 その粒子の静止系を $ O'$ とし、 発射される光子の運動速度を $ u'= c$ とすれば、

$\displaystyle \tan \theta \equiv \frac{u_\perp}{u_\parallel} = \frac{1}{\gamma}...
...theta'}{\cos\theta' + v/c} = \frac{1}{\gamma} \frac{c}{v} \sim \frac{1}{\gamma}$ (15)

が得られる。 最後の等号は $ \theta'=\pi/2$ としたときのものである。 これから $ \gamma \gg 1$ のとき

$\displaystyle \sin \theta \sim \gamma^{-1} \ll 1$ (16)

えあることが分かる。 従って粒子の静止系で運動方向に垂直に放射された光子でも、 (粒子が高速で運動している様に見える)観測者の系 $ O$ から見ると、 光子は粒子の運動方向の狭い角度 $ \theta \sim \gamma^{-1}$ に放射されたように見えることが分かる。 これを相対論的 Beaming 効果と呼ぶ。

fat-cat 平成16年11月29日