RESEARCH〜研究紹介〜
Gravitational Lensing
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Gravitational Lensing / 銀河団weak lens解析画像集
Gravitational Lensing
遠方天体(ソース天体)の光は経路上の重力源(レンズ天体)によってその経路を曲げられる。 これによりソース天体の像が増光されたり歪められたりする効果のことを重力レンズ効果と呼ぶ。重力レンズ効果はその強さによって3つのタイプ(strong・weak・micro)に分けられるが、本研究室ではstrong lensing、weak lensingについて研究を行っている。
- Weak Lensing
ソース天体は系統的にある方向(レンズ天体中心に対してtangentialな方向)に歪む。
一つ一つのソース天体の歪み効果は小さい(weak)が、多くの信号を足し合わせることでレンズ天体の質量分布を求めることができる。
weak lensingは質量そのものによって生成されるため、仮定無しにレンズ天体の質量分布を求めることができる唯一の手法である。
- Cluster Lensing 銀河団は宇宙に存在する様々な天体の中でも最も重い天体であり、階層的構造形成モデルによれば最も最近にできた天体であると考えられている。 その構成要素は銀河5%、高温プラズマ15%、暗黒物質80%で質量のほとんどが可視光でもX線でも観測できない暗黒物質から成っている。 そのため銀河団の性質を知るためには、暗黒物質を直接に捉えられる重力レンズ効果が重要になってくる。
左図の中心では銀河が集まり銀河団A1835を形成している。 一方でweak lensing解析によって得られた質量分布(等高線)は銀河分布と同様の集中を示しており、確かに質量集中があることが確認される。 また、推定された質量は銀河や高温ガスだけでは説明できず暗黒物質が必要であることを示唆している。
銀河団は宇宙論的にも重要な天体であり、近年その統計的性質を用いた標準宇宙論(ΛCDM)における階層的構造形成の検証(Okabe et al 2009) や暗黒エネルギー探査が行われている。
またX線観測と組み合わせ銀河団の各構成物質分布を調べることで、銀河団の衝突の様子が詳細に分かってきた。 下左図(A1750)では重力レンズから求めた物質分布(紫)、X線観測から求めた高温ガス分布(ピンク)、銀河分布が一致しており、2つの銀河団が衝突する直前であることが分かる。 一方、下右図(A2034)では高温ガスが他の2成分とは異なる分布を示している。 これは2つの銀河団が衝突し無衝突系である銀河と暗黒物質(上、下)はすり抜け、高温ガス(中央)だけがその圧力で中心部に取り残されているためである (Okabe&Umetsu 2008)。 この特徴は有名な衝突銀河団1E0657-56 (Clowe et al 2006)と一致している。
このように多波長で銀河団を観測することにより、銀河団の形成・進化を詳細に調べることができる。
銀河団weak lens解析画像集
Okabe & Umetsu 2008の衝突銀河団の一覧LoCuSS(Local Cluster Substructure Survey)の銀河団の一覧