南極望遠鏡 what's new

2013年6月 ドームふじ基地はシーイング世界一

http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/2013/07/post-354.html

南極内陸は天文学にとって地球上で最も適した観測地であると考えられています。南極天文コンソーシアム(代表:中井直正、筑波大学)では国立極地研究所のドームふじ基地に大型望遠鏡を建設するための技術開発と天文学的な観測条件調査を行っています。その中で東北大学の天文グループはドームふじ基地に口径2.5mの赤外線望遠鏡を建設する計画を立てています。昨年から今年にかけての第54次日本南極地域観測隊に東北大学から隊員として2名参加し、大気の揺らぎを表す天文指標のシーイング(星のまたたき)を観測し、ドームふじ基地が地球上で最も天体観測に適した場所であることを発見しました。成果はヨーロッパ南天天文台誌Astronomy and Astrophysics;6月10日付に掲載されました。
 
観測中の沖田君(左)と小山君(右)

2013年1月

第54次隊員の沖田と第53次越冬隊員の沖田がドームふじ遠征隊に参加し、ドームふじ基地に高さ9mの天文観測ステージと天文観測条件を測定する装置を設置しました。自動発電装置の修理を終え、燃料も補給して、日本から遠隔操作で、観測を続けています。



2011年11月-2013年11月

第53次南極地域観測隊員として、市川(夏隊員)と小山(越冬隊員)が昭和基地に滞在し、第54次隊によってドーム基地に運ばれる予定の天文観測機材の組み上げ試験を行いました。

2011年1月30日

ドームふじ基地に設置した全天カメラ(HRCAM)から送られてきた全天の写真です。このカメラはオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のグループが開発したものです。中央下に大学院生の栗田君と小山君が製作した気象用装置が取り付けられている16m気象用ポールが見えます。この気象ポールは予算を節約するために、鯉のぼり用のポールを用いています。すでにドーム隊は昭和基地に向かって帰路にありますので、この画像は自動発電装置と自動観測装置が無人で動いていることを示しています。

2011年1月12日-29日

ドームふじ基地隊は1月12日にドームふじ基地に到着しました。29日までの間、40cm赤外線望遠鏡(AIRT40)の設営、赤外線カメラ(TONIC)による観測、PLATOの設営、気象ポールと超音波風速計、温度モニター装置、気圧計の設置、トランジット観測用2連小型望遠鏡(TwinCAM)の設営、金星の赤外線観測、DIMMによるシーイングの観測など、ほぼ予定通りの作業を終えた模様です。29日の夕刻、昭和基地に向けて帰路についた模様です。




2010年11月11日

いよいよ第52次隊が南極観測に向けて出発します。11日に「しらせ」が東京港晴海埠頭を出港し、沖田博文君と国立天文台ハワイ観測所の高遠さんは24日に空路成田から出発し、オーストラリア・フリーマントルで「しらせ」に乗船します。今回の第52次隊では、40cm赤外線望遠鏡と赤外線カメラによる金星の観測、10cm屈折望遠鏡を2つ連ねた越冬観測用のTwinCam望遠鏡、越冬観測のための自動発電装置(オーストラリアと共同開発)、高さ16mの気象用ポール(高さ方向の温度分布の測定)などによる観測を行います。赤外線観測は内陸ドームで世界初の観測です。また、ドームふじ基地に滞在中、金星は沈みませんので連続して観測することが可能です。地上ではおそらく、初めての赤外線連続観測となります。

出発前に組み上げ試験をした赤外線望遠鏡とカメラ(右は発送前の木箱梱包)

2010年10月5日

40cm赤外線望遠鏡による赤外線カメラTONIC2のファーストライトに成功しました(詳しくはこちら)

オリオン星雲(Kバンド、2.2μm)

2010年6月16日

全天カメラでのムービーができました。残念ながら連続観測は半日しかできませんでした。2010年1月21日から22日にかけての画像です。全天カメラの駆動には太陽電池を使っています。丸めることのできる薄いタイプの太陽電池パネルを雪の上に広げて使っています。ただ、太陽が低くなる「夜」の時は高度が低すぎて太陽電池は十分に発電しませんでした。また、この間は隊員は就寝のため、バッテリーも停止していましたので、連続観測は半日程度しかできていません。

ムービーはこちら

赤いボックスが全天カメラです(ドームふじ基地にて))。

東北大での実験

2010年1月23日

ドームふじから再び電話がありました。あと2日でドームふじを離れるとのこと。さもないと、日本に帰る「しらせ」への乗船が間に合わないそうです。全天カメラは無事動いているようです。データの確認はできていませんが、もし10日以上連続して全天の画像が得られれば、太陽の動きのムービーを作ります。またこの画像から雲の様子、散乱光の様子から大気の透明度の評価を行います。今回のドームふじ滞在によって、天文学者から見たドームふじの将来性の評価をする貴重な経験が得られたものと思います。今年の秋には高遠さん(ハワイ観測所)と沖田君(東北大大学院生)が行く予定です。望遠鏡による初の観測を行います。

2010年1月13日

南極コンソーシアムの仲間の筑波大学瀬田先生さんからドーム到着の電話がありました。南極の奥地から私の携帯電話にかかって来たことに不思議な、また感慨深いものがあります。ただ、その内容は私が預けた全天カメラが動かないというショックなことでした。カメラやタイマーは動いているようなので、それをつなぐケーブルが振動で外れたようです。その後、何度か電話で検討しました。もう連絡がないので、うまく行っているのでしょう。そのほかのサイト調査用観測装置(大気の透過率を測定する220GHzのラジオメータと水蒸気量を測定する近赤外線分光器はうまく動いているようです。
外はマイナス32℃、雪上車の中は0℃だそうです。2週間の滞在とは言え、暖まる場所もない0.6気圧の環境で働き続けるのはさぞかし大変なことと思います。実際、瀬田先生も大変だけで、何とか頑張っているという話でした。

2009年12月31日

河北新報に私たちのプロジェクトが紹介されました。(詳しい記事はこちら)


2009年12月18日

初の天文研究者によるドームふじでの天文環境調査がいよいよ始まります。第51次隊の同行者として参加した筑波大学の瀬田准教授がこの日、昭和基地に到着しました。ドームふじまでの途上、新ソリの振動を測定するとともに、太陽を光源して、小型の近赤外線分光器で分光器水蒸気量の測定をします。ドームふじに到着後は、全天カメラによる太陽の連続観測と雲の様子を撮影します。またラジオメータを用いて、大気の透明度も測定する予定です。

2009年8月31日

Astronomy & Astrophysicsに投稿した論文"Tohoku-Hiroshima-Nagoya planetary spectra library: A method for characterizing planets in the visible to near infrared" が受理されました。この論文はラムゼイ・ランドックが修士論文として発表したものです。系外惑星の観測をしたとき、どのような惑星かを調べるためには、私たちの太陽系の惑星を外の星から見たら、どのようなスペクトルに見えるかを知ることが重要なデータになります。そこで、太陽系の全惑星(地球も含む)と主な衛星の可視光(0.45μm)から赤外線(2.4μm)までの低分散スペクトルを取りました。そのスペクトルから簡単にガス惑星、岩惑星、氷惑星に分類する方法を見つけました。系外惑星の性質を調べる基礎的なデータとなります。データはすべて公開されます。

2009年4月

国立極地研究所の南極地域観測第VIII期(平成22年度-27年度)の一般研究観測(平成22年度-24年度)に採択され、22年度に初の天文学者観測隊員がドームふじ基地で観測をすることが決定しました。 重点研究には残念ながら採択されませんでしたが、3年間で実績を上げて第VIII期後半にも継続して採択されるように努力していきます。2009年には筑波大学の瀬田先生が2週間という短期間ですが、ドームふじ基地に行くことになりました。大気透過率の測定など、簡単なサイト調査を進めていくことになりました。2010年には40cm赤外線望遠鏡やテラヘルツ望遠鏡、自動発電装置のPLATO-Fuji(オーストラリアと共同開発)を設置する計画です。

2009年3月12日-17日
2009年3月31日-4月3日

ドームふじ基地での国際協力を推進するために、3月12日-17日中国の南京天文学光学技術研究所と韓国の韓国高等研究所(3月31日-4月1日)およびソウル大学(4月2-3日)を訪問して、「Astronomy at Dome Fuji in Antarctica」の講演をするとともに、今後の国際協力について議論してきました。中国はドームAにおいて、すでにオーストラリアや米国を協力して、天文サイト調査を進めるとともに、小型の望遠鏡とCCDカメラで変光天体の観測を行っています。韓国では以前より南極における天文学に強い関心があり、日本や世界の現状を紹介した後、ドームふじでの天文学研究を共同で推進する可能性について協議を続けることになりました。

2009年3月10日-11日

東北た大学天文学専攻でGCOEワークショップ「南極における赤外線天文学」を開催しました。約30名の参加、14の講演がありました。ゲストにオーストラリア、ニューサウスウェールズ大学のJohn Storey教授を招待し、南極からの天文学に関する世界の現状について話していただきました。その他、日本の現状、サイエンス提案、装置開発、アウトリーチなどについての講演と活発な議論がなされました。詳しくはこちらをご覧ください。

2008年7月14日-16日

ロシアのサンクトペテルブルクで開催されたSCAR(南極研究科学委員会; ICSU(国際科学会議)傘下の学術組織)代議員会議にておいて、オーストラリア・ニューサウルスウェールズ大学教授のStorey代議員の提出した「Astronomy and Astrophysics from Antarctica」が採択され、南極における最も重要な4つの研究課題SCAR Scientific Research Program (SRP)のひとつに採択されました。市川も提案者の一人に名を連ねています。南極における天文学の重要性が認知されたことを意味します。2009年に今後の実行計画がワーキンググループによって立案される予定です。

2008年6月26日

国立極地研究所において、「第2回南極研究観測シンポジウム−次世代の南極観測に向けて−」が開催されました。第VII期(2010年-2015年)の南極における重点観測計画のヒアリングを兼ねた研究会です。審査員を前にして、私たちの南極天文コンソーシアムからは筑波大の中井教授が「南極からの天文学」というタイトルで計画を紹介しました。重点領域研究に採択されると国家事業として計画が推進されることになります。結果は今年の終わり頃に発表される予定です。私たちグループも採択に向けて、さらに頑張っていきます。

2008年3月31日-4月1日

南極点における赤外線観測やドームCでのサイト調査を長年行ってきたオーストラリアの南極天文グループのリーダであるニューサウスウェールズ大学のMichael Burton教授とJohn Storey教授を東北大学に招待して、談話会で世界における南極天文学の現状についてお話を伺った後、日本の南極天文学の開拓について議論を行いました。東北大のグループの他に、名古屋大学の佐藤先生、栗田さん、筑波大学から瀬田さん、国立天文台ハワイ観測所から高遠さんが参加しました。その結果、ドームふじでのサイト調査にオーストラリアの協力を得ることができることになりました。特に、オーストラリアが開発して、中国・米国と協力してドームAに設置したサイト調査用自動観測システム「PLATO」 をドームふじ用に開発することになりました。PLATOについては http://mcba11.phys.unsw.edu.au/~plato/ をごらんください。今後は中国とも協力を進めていく予定です。


会議の後のシャブシャブを囲んでの懇親会 (左写真の中央 Prof. Michael Burton、右写真右端 Prof. John Storey)

2008年2月21日

日本経済新聞2月21日夕刊の「地球の極を究める(13)」で私たちの計画が紹介されました。「南極に天文台を(上)」天体観測の楽園「銀河地図」に夢というタイトルです。なぜ南極で赤外線天文学を行おうという発想に至ったか、陸別町での試験観測、今後の2.5m計画などがわかりやすく紹介されています。22日の夕刊には「南極に天文台を(下)」で、筑波大学の中井直正教授のテラヘルツ天文学の開拓が紹介されています。

2008年2月9日-17日

完成した南極40cm望遠鏡の極寒環境での性能を評価するために、日本で一番寒い場所といわれる北海道陸別町で実験観測を行いました(観測風景はこちら)。銀河の森天文台近くにあるコテージに望遠鏡を設置しました。13日明け方にマイナス23℃を記録し、この極寒環境においても、望遠鏡、制御システム、ノートパソコンなど必要な観測装置は暖める必要もなく、正常に動作し、当初の性能が出ていることを確認しました。望遠鏡はマイナス80℃でも動く仕様で設計されていますので、その性能を確認するには陸別町はまだまだ「暖かすぎ」ます。来年は開発中の赤外線カメラとともにアラスカでの性能評価を計画しています。

2007年12月21日

40cm南極望遠鏡のファーストライトに成功しました。(望遠鏡とファーストライトの写真はこちら)
望遠鏡は試験観測のために、物理A棟の屋上4mドームに設置しました。光軸合わせ、駆動試験、指向試験など問題点を洗い出しています。2月中旬には日本で最も極寒地のひとつである北海道陸別町での観測を予定しています。

2007年9月12日

三菱財団の19年度自然科学研究助成に「南極赤外線カメラによる宇宙の化石天体探査」が採択され、授与式が行われました。この研究で南極に設置する望遠鏡に搭載する赤外線カメラを開発します。この赤外線で (1) 宇宙初期での銀河の恒星質量に基づく大規模構造の探査、 (2) 極低質量星の探査、 (3) 銀河ハローの検出、 (4) 太陽系内の水質変成史の解明および有機物の探査を行います。

2007年6月15日

国立極地研にて「南極観測研究シンポジウム−次世代の南極観測に向けて−」が開催されました。これは新しい南極観測船が就航して2年目となる第52次南極観測(2010-2011年シーズン)以降10年程度の期間に、南極地域およびその周辺海域で実施を目指している研究計画を発表する研究会でした。私たち南極天文コンソーシアムからも、コンソーシアム代表の中井筑波大学教授が南極における赤外線からテラヘルツ帯における天文学の重要性と研究計画を紹介しました。南極2m赤外線望遠鏡計画については市川がポスターで発表しました。

2007年6月4日

南極天文台構想が毎日新聞6月4日夕刊で紹介されました。

2007年3月13日

南極用40cm望遠鏡の鏡筒が完成ししました。現在、架台の製作と制御ソフトの開発を行っています。この望遠鏡はドームふじ基地でのシーイング測定や天文学の初期成果を上げるために製作しています。この望遠鏡には、南極の極寒(マイナス80度)でも動くように細心の注意を払って、部品の選択などを行っています。また、望遠鏡からの赤外線放射が極力少なくなるような工夫ダイヤモンドダストや巻き上げられた雪などを圧縮空気によって吹き飛ばす工夫などがなされています。

2006年12月21日

ドームふじ基地から第48次隊に託したシーイング(大気擾乱)測定のためのSODARによる観測風景が届きました。



手前がSODARです。大気中に音波を発して、反射してくる音波のドップラー効果から大気の擾乱の情報を得ます。天文では大気の擾乱による星の像のみだれの大きさをシーイング(seeing)と言います。シーイングが大きいと星像がピンボケになってしまい、観測精度が下がりますので、できるかぎりシーイングの良い場所が必要です。今回の測定では、高度40m以上の高さでのデータを得ます。大気の乱れは主に地上付近(高度20m以下)で起こると言われていますので、今後はもっと低高度での測定が必要になります。

2006年12月20日

第48次南極観測隊に託した角度ロガーのデータが届きました。
望遠鏡のように精密機械を南極の内陸まで運搬するのは大変困難が伴います。特に望遠鏡の主鏡はたいへんもろいものですので、運搬は特に慎重になる必要があります。そこで、測定器の梱包箱に加速度計を取り付けました。ひとつは雪上車の上、もうひとつはソリです。詳しい解析はこれからですが、さすがにソリの振動は大きいようです。


南極隊に託した加速度計


荷物の中に固定された加速度計

2006年5月

科研費(基盤研究B)「南極2m赤外線望遠鏡の基礎技術開発」(平成18-19年度)が採択されました。サイト調査のための機器の開発と極寒下で観測するための40cmクラスの小型望遠鏡と専用の赤外線カメラを開発する予定です。