3 どれくらい回折するかの見積もり

図1の様に$ (z,x)$平面を考え、x軸方向に無限に広がった波長$ \lambda$の光が幅$ D$の単スリットに入射して角度 $ \pm \alpha$の範囲に回折した場合を考える。 スリットに入射する前で波数 $ \vk=(k_z,k_x)$は、不確定性関係Eq.(3)より、

$\displaystyle \Delta k_x \geq \frac{2\pi}{\Delta x},$   ここで、$\displaystyle \Delta x =\infty$より、$\displaystyle \Delta k_x =0$となるので、$\displaystyle \vk=(k_z,0)= \left(\frac{2\pi}{\lambda},0\right)$    

となる。一方$ \alpha$方向に回折された光は $ \Delta x=D$より $ \Delta k_x \geq 2\pi/D$となり零でない。 z方向については何も変化していないので $ k_z=2\pi/\lambda$である。よって図2より

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$\displaystyle \Delta k_z \cdot \alpha = k_x,\quad \t...
...\alpha = \frac{k_x}{k_z}= \frac{2\pi}{D}\frac{\lambda}{2\pi}= \frac{\lambda}{D}$ (4)

を得る。これでどれくらい回折するかを見積もる式を得ることができたが、 これは観測の不確定性ではなく、干渉から得られた結果と一致する(ここでは導出は省略する)。

多くの量子力学の教科書を見ると、回折をHeisenbergの不確定性関係Eq.(1)を用いて説明しているが、 その必要はなく、古典的な観測の不確定性関係から導くことも可能であり、むしろこちらの方が実際の観測に於いては本質的な意味を持っている。

図 1: 単スリットによる回折
\includegraphics[width=12.00truecm,scale=1.1]{fig1.eps}

図 2: 回折による波数ベクトルの変化
\includegraphics[width=7.00truecm,scale=1.1]{fig2.eps}

fat-cat 平成17年5月21日