a)の結果から
Eq.(37)は
極を避けて極の上側を通るように積分経路を選ぶことが、遅延Green関数を選択する条件であるので(後でその物理的理由について考える)、 積分経路は図のようになる。 始めにのときを考える。
次にのときを考える。
についての積分が求まったので、次に についての積分を実行する。 この時図のような座標系を採用する。
以上より求めるべき遅延Green関数は
今回 遅延Green関数を得るために、極 の上側を通る積分経路を考え計算を行った。 これを下側に変えた場合を考える。 下側を通る積分経路の場合、先の計算同様の手順を辿れば の時の積分結果が上側の時と逆になる(積分経路の向きから符号も逆になる)。 この結果得られるGreen関数はで零、で値を持つため先進Green関数であり、
Eq.(32)は物理的には「座標の点に時刻の瞬間、単位電荷が存在した場合、座標の観測者が観測するポテンシャル」の微分方程式である。 この場合観測者は必ずにポテンシャルを観測し、に観測することは絶対にあり得ない。 よっては遅延型でなければならず、決して先進型ではあり得ない。これは因果律によるものである。
以上が積分経路を極の上側にした、物理的な理由である。
著者: 茅根裕司 chinone_at_astr.tohoku.ac.jp