1 特殊相対性原理

特殊相対論は、

  1. 真空中での光の伝播速度が任意の慣性座標系で同じ値を持つこと、
  2. 物理法則が任意の慣性系で同じ形式で表される(慣性系は皆同等)
という二つの要請を基礎としている。 例えば、 ある慣性系 $ O$ で粒子の運動を観測すれば、 その運動は四つの数の組み合わせ $ \left(x^0,x^1,x^2,x^3,x^4\right)=\left(ct,x,y,z\right)$ の変化として表される。 そして、 この同じ粒子を慣性系 $ O$ に対して、速度 $ {\bf v}$ で等速直線運動している別の慣性系 $ \overline{O}$ で観測すれば $ \left(\bar{x}^0,\bar{x}^1,\bar{x}^2,\bar{x}^3,\bar{x}^4\right)=\left(c\bar{t},\bar{x},\bar{y},\bar{z}\right)$ を用いて記述することになる。 以下では専ら時間の変数として $ x^0 = ct$ を用い、 時間を長さの単位で測ることにする。 従って、 例えば速度は光の速度で規格化した($ c$ を壱とした)無次元の量となる。

同じ粒子の運動を別々の慣性系で観測したときに、 一つの系で得られた結果を別の系で使われる「言葉」に翻訳することは座標変換によって行われる。 上の二つの要請を満たす慣性系間の座標変換はローレンツ変換と呼ばれている。 特殊相対論に於いては、 ニュートン力学に於ける絶対時間を導入することができず、 時間も慣性系間に於ける座標変換の対象となる。 従って、 特殊相対論に於ける座標変換では、 ニュートン力学に於ける三次元ベクトルや $ 3\times 3$ のテンソルではなく、 時間成分も含めた四次元ベクトルや$ 4\times 4$ テンソルの変換則を考える必要がある。

fat-cat 平成16年11月28日