主な研究内容

天体理論グループでは、天体形成や高エネルギー現象を始めとして、天体物理学全般を理論的に研究しています。

簡単な研究紹介(PDFファイル)

天体形成

宇宙は138億年前のビッグバンにより誕生しました。その際の宇宙はほぼ完全に一様・等方な高熱のエネルギーの塊です。一方で、現在の宇宙は星・惑星系、星団、銀河、巨大ブラックホール、銀河団、大規模構造といった多様な階層の天体から成り立っています。これらの天体の種となったのは、宇宙背景放射の温度揺らぎとして誕生後38万年後の宇宙に存在が確認されている、微小な密度の揺らぎです。この種である密度揺らぎが重力により成長して、最終的に銀河、恒星、惑星などの天体が誕生する過程を重力、輻射・化学過程を考慮した理論計算により解明を進めています。

主な研究トピック

  • 宇宙初代星の形成
  • 第2世代星の形成
  • 宇宙初代銀河の形成
  • 巨大ブラックホールの起源
  • 宇宙の再イオン化
  • 銀河系内の大質量星形成
  • 恒星とその周囲の惑星形成
  • シミュレーション天文学

高エネルギー天体物理学

恒星はその核融合燃料を使い尽くし重力収縮した後、ブラックホールや中性子星などの高密度星となります。これらはその後ひっそりと隠居生活をするかと思いきや、そうとは限りません。一部の高密度星は、その深い重力ポテンシャルエネルギーや大きい回転エネルギー、あるいは磁場エネルギーを周辺のプラズマに解放することで、恒星時代より激しい活動性を見せます。この活動性は、パルサー、超新星残骸、活動銀河核、ガンマ線バーストなどの天体において、電波・可視・X線・ガンマ線にわたる広い波長域で観測されています。

これらの天体に特徴的な性質は、莫大なエネルギーが低密度なプラズマに解放されることで、プラズマの一部あるいは全体が相対論的に高エネルギーになることです。言い換えると、粒子の速度が光速にきわめて近く、運動エネルギーが静止エネルギーE=mc^2を圧倒するほど大きい状態になることです。粒子が高エネルギーを獲得する詳細な過程は、現代のプラズマ物理学をもってしても不明な点が多いです。それらを解明しつつ、天体の構造を研究する学問が高エネルギー天体物理学であり、国内外で活発な議論がなされています。

高エネルギー天体は数として宇宙の少数派ですが、その影響の大きさは計り知れません。天体から逃げ出した高エネルギー粒子は、宇宙線として、宇宙全体における主要要素の一つとなります。また宇宙に存在するすべての銀河は、その中心に巨大なブラックホールを有していると考えられ、上で述べたような活動性が銀河や銀河団の進化に重要であった可能性があります。ガンマ線バーストはその明るさゆえ、宇宙初期の構造形成の有力な観測手段です。アインシュタインの予言する重力波の放射源候補でもあります。このように、高エネルギー天体物理学は、多種多様な最新観測により進展し、その成果が多くの関連分野へ波及しうる、非常に魅力あるテーマといえます。

参考図書
「ガンマ線バースト」、村上敏夫著、講談社ブルーバックス
「天体高エネルギー現象」、高原文郎著、岩波書店