3 計量テンソル

空間中の近接する二点 $ x^i$ $ x^i +d x^i$$ \bar{x}^i$ $ \bar{x}^i +d \bar{x}^i$) とを結ぶベクトルを

$\displaystyle d\bm{x}= dx^i   \bm{a}_i = d\bar{x}^i \bar{\bm{a}}_i$ (13)

と表せば(従って $ \bm{a}_i = \partial \bm{x}/\partial x^i$ など )、この二点間の距離はスカラー積を用いて

$\displaystyle d\bm{x} \cdot d\bm{x}$ $\displaystyle = \bm{a}_i \cdot \bm{a}_j   dx^i dx^j \equiv g_{ij} dx^i dx^j$    
  $\displaystyle = \bar{\bm{a}}_i \cdot \bar{\bm{a}}_j   d\bar{x}^i d\bar{x}^j \equiv \bar{g}_{ij} d\bar{x}^i d\bar{x}^j$ (14)

と書ける。ここで

$\displaystyle g_{ij} = \bm{a}_i \cdot \bm{a}_j,\qquad \bar{g}_{ij} = \bar{\bm{a}}_i \cdot \bar{\bm{a}}_j$ (15)

などとした。二点間の距離がスカラー量であり座標系に依存しないことから

$\displaystyle ds^2 = g_{ij}   dx^i dx^j= \bar{g}_{ij}  d\bar{x}^i d\bar{x}^j$ (16)

であり、従って

$\displaystyle \bar{g}_{ij} = \frac{\partial x^k}{\partial \bar{x}^i}\frac{\partial x^l}{\partial \bar{x}^j} g_{kl}$ (17)

が成り立ち、$ g_{ij}$ が二階の共変テンソルであることが分かる。この共変テンソル $ g_{ij}$ は計量(metric)テンソルと呼ばれ、

$\displaystyle g_{ij}= g_{ji}$ (18)

が成り立つ対称テンソルである。 $ \bm{a}_i$ を直交系にとれば $ g_{ik}$ は対角成分のみが零でない値をもつことになる。 また $ g_{ik}$ の逆行列を $ g^{ik}$ と書くことにすると、$ g^{ij}$

$\displaystyle \bar{g}^{ij} = \frac{\partial \bar{x}^i}{\partial {x}^k}\frac{\partial \bar{x}^j}{\partial {x}^l} g^{kl}$ (19)

であり、二階の反変テンソルである。従って

$\displaystyle g^{ik} g_{jk} = \delta_{j}^i$ (20)

と書ける。 $ \delta_{j}^{i}$ は Kronecker delta であり、 任意の座標系で $ i=j$ のとき $ \delta_{j}^{i}=1$$ i\neq j$ のとき $ \delta_{j}^i=0$ で定義されるとする。 このとき $ \delta_{j}^i$

$\displaystyle \frac{\partial \bar{x}^k}{\partial x^j} \frac{\partial x^i}{\part...
...^i}{\partial x^k}\frac{\partial x^k}{\partial \bar{x}^j} = \bar{\delta}_j^{i}
$

を満たすので、二階の混合テンソルである。 また $ \delta^{ij}=g^{ik} \delta_k^j = g^{ij}$ であるから、 $ \delta_j^i$ をKronecker delta とすれば、 $ \delta^{ij}$ $ \delta_{ij}$ は必ずしも Kronecker delta として振る舞わないことが分かる。

$ \xi^j$ を反変ベクトル(成分)とするとき、 $ \xi_i=g_{ij}\xi^j$ で定義される $ \xi_i$

$\displaystyle \bar{\xi}_i =\bar{g}_{ij} \bar{\xi}^j = \frac{\partial x^k}{\part...
...\partial \bar{x}^i} \xi_{k} = \frac{\partial x^j}{\partial \bar{x}^i} \xi_{j}
$

であるから、共変ベクトル(成分)として振る舞うことが分かる。 同様にして $ \xi_j$ を反変ベクトル(成分)とするとき、 $ \xi^i=g^{ij}\xi_j$ で定義される $ \xi^i$

$\displaystyle \bar{\xi}^i =\bar{g}^{ij} \bar{\xi}_j
= \frac{\partial \bar{x}^i...
...{x}^i}{\partial {x}^k} \xi^k = \frac{\partial \bar{x}^i}{\partial {x}^j} \xi^j
$

であるから、反変ベクトル(成分)として振る舞うことが分かる。

上の様にして計量テンソル $ g_{ij}$$ g^{ij}$ などを使って反変テンソル成分と共変テンソル成分とを結びつけることは、 $ \vec{\xi} = \xi^i \bm{a}_i = g^{ij} \xi_j \bm{a}_i = \xi_{j}\bm{a}^j$ であることから、 反変成分と共変成分の基底ベクトルを $ \bm{a}^j= g^{ij} \bm{a}_i$ などの関係で結びつけることに対応する。 これはまた、 $ \bm{a}_i \cdot \bm{a}^j=\bm{a}_i \cdot g^{kj} \bm{a}_k = g^{kj} \bm{a}_i \cdot \bm{a}_k = g^{kj} g_{ik} = \delta_i^j$ であることを意味している。 またこのとき二つのベクトル量の内積

$\displaystyle \vec{\xi} \cdot \vec{\eta} = \xi^i \eta^j \bm{a}_i \cdot \bm{a}_j = g_{ij} \xi^i \eta^j = \xi^i \eta_i = \xi_i \eta^i$ (21)

で定義されることになる。 また $ \bm{a}_i$単位直交基底となるような定ベクトルを使うデカルト座標の場合は、反変ベクトルと共変ベクトルの区別は必ずしも必要では無くなる。 また、例えば $ d\bm{x} = dx^i \bm{a}_i$ を球座標 $ (r,\theta,\phi)$ の場合にあからさまに書き表せば

$\displaystyle d \bm{x} = dr   \bm{a}_r + d\theta   \bm{a}_\theta + d\phi   \bm{a}_\phi
$

となるが、ベクトル

$\displaystyle \bm{b}_r = \sqrt{g^{rr}}  \bm{a}_r = \bm{a}_r ,
\qquad
\bm{b}_\t...
...{b}_\phi = \sqrt{g^{\phi\phi}} \bm{a}_\phi
= \frac{\bm{a}_\phi}{r\sin\theta}
$

を導入して

$\displaystyle d\bm{x} = dr   \bm{b}_r + r  d\theta   \bm{b}_\theta + r\sin\theta   d\phi   \bm{b}_\phi
$

などと書くのが普通である。 直交系の場合、 $ \bm{b}_i \cdot \bm{b}_j =\delta_{ij}$ となり、 $ \bm{b}_r,\bm{b}_\theta,\bm{b}_\phi$ の前に来る量が同じ物理的次元を持つようにすることができる。 同様にして

$\displaystyle \bm{b}^r = \sqrt{g_{rr}} \bm{a}^r = \bm{a}^r,
\qquad
\bm{b}^\the...
...bm{b}^\phi = \sqrt{g_{\phi\phi}}  \bm{a}^\phi
= r \sin\theta  {\bm{a}^\phi}
$

として, ベクトル $ \bm{b}^i$ を導入することができる。

fat-cat 平成16年11月29日