この基礎ゼミでは、1セメスターの間(観測)天文学を行う天文学者になりきってもらいます。
観測天文学は、実験物理学の一種です。ただし、他の実験物理の分野とは全く違う所があります。それは、一部の例外を除いて(はやぶさ衛星によるサンプルリターンや、隕石等)、観測対象を実際に触ったり、目の前で見たりする事ができないという所です。あの星がどうなってるか知りたいからちょっと行って見てくる、という事は出来ないのです。また、こちらから観測対象にエネルギーを与える等して能動的に変化を起こさせ、その結果を調べるというような事もできません(これも、NASA のディープインパクト計画といった例外はありますが)。太陽がもうちょっと勢いよく燃えたらどうなるか知りたいから、そうだなぁ、ガソリンでもかけてみようかとか、ガスバーナーで熱してみよう、というわけには行かないでしょう?
つまり、現在の所、我々人類が出来る事は、手の届かない非常に遠くにある天体からはるばるやって来る電磁波(光)を受けて、それを詳しく調べる事「だけ」です。なーんだ、と思うかもしれませんが、実際の所それだけしか出来る事が無いのです。ただし、非常に遠くにある天体からやってきた光には様々な「情報」が含まれています。その光に含まれる情報を余す事無く抜き出すために様々な観測手法、観測装置が存在しています。これらをの観測手法、観測装置を駆使し、光から情報を抜き出して遠方にある天体の様々な事柄を知るのが観測天文学です。
はいはい、念のために一応言っておきますと、電磁波(光)以外に、ニュートリノや重力波をとらえる観測天文学もあります。東大の小柴先生が我々の隣の銀河、大マゼラン星雲で発生した超新星爆発の際に放出されたニュートリノを検出してノーベル賞を受賞されましたね。重力波は今のところ検出されていませんが、今後検出されるかもしれません。いずれにせよ、この基礎ゼミで出来る範囲を大いに逸脱していますので、電磁波(光)に限って研究を進めてください。