銀河-実験観測グループ

市川は2017年3月をもって定年退職です。
市川研究室では、ものづくりに基づく研究を基本にしています。自分で考え、装置を自分で作り、実際の望遠鏡に取り付けて天体観測を行うことを実践しています。研究テーマは主に遠方宇宙の銀河の進化と分布に関する研究ですが、新しい装置に合わせて、新しいサイエンスも開拓しています。その例が、最近の成果である太陽系惑星のスペクトルライブラリです。MOIRCSでは宇宙がまだ若かった時の銀河の観測を行って分布や進化を調べる研究を進めています。:現在は南極赤外線望遠鏡の開発とMOIRCSによる銀河研究を並行して推進しています。MOIRCSはまさに手作りの観測装置でした。南極望遠鏡も自分たちで考え、開発していくことを目指しています。MOIRCSの開発・製作風景は下の写真をご覧ください。大学院生が中心になって作ったといっても多くの人には信じてもらえませんが、本当です。私の研究室です各院生、教官はそれぞれ各部の分担をして、責任を持って、それぞれ設計、製作、組み上げ、実験を行ってきました。
銀河・観測実験グループでは装置開発と天文学研究の時期が交互にやってきます。現在はMOIRCSを用いた研究と次のプロジェクト「南極からの赤外線天文学」が並行して進行中です。装置開発は具体的な研究テーマを設定して進めています。MOIRCSの主な研究目的は、「high-z宇宙での銀河進化、大規模構造の解明」でした。しかしながら、視野が十分でない、共同利用装置なので、時間が十分にとれないなどの理由によって大規模構造の解明は難しいことがわかりました。そこで、観測時間が十分に得られる自前の望遠鏡を地上におけるベストサイトの南極に作ろうと決めました。これならば、すばる望遠鏡にもできない最先端の研究ができます。ところが、ドームふじに望遠鏡を設置すると、新しいサイエンスの可能性が非常に広がることがわかってきました。そこで、「太陽」、「系外惑星探査」に始まって「high-z宇宙での銀河進化、大規模構造」にいたるまで、様々な研究テーマを開拓していくことにしました。装置開発と観測研究の雰囲気が同時に経験できるのも本グループの特徴です。

MOIRCSの開発は終了し、現在、MOIRCSを用いたMOIRCS Deep Survey (MODS)プロジェクトのデータ解析を進めています。MODSは現在も世界で最も深い銀河の赤外線カタログです。このカタログを基に、high-z銀河の空間分布、ダークマターとの相関、質量関数、光度関数、銀河進化の研究などを行っています。これから入学して観測研究を志す大学院生は、この観測データやカタログを使って研究を進めていくことができます。修士課程では2年間にある程度まとまった成果を出すために、基本的な研究を行います。博士課程では、さらに深く研究を進めていくために、各自が専門的なテーマを選んで新しい研究を行っていきます。

ものづくりをしてみたい人は南極望遠鏡のための装置開発を行うとともに、南極で行う新しいサイエンスを模索していきます。このプロジェクトで研究成果が出るのはしばらくかかりますので、どちらかというと開発が中心になりますが、南極での観測の準備のために、国内外の望遠鏡を使って観測研究も行っています。2010年に40cm 赤外線望遠鏡をドームふじに持ち込んで、最初の観測を行いました。修士論文では2010年の初観測のデータ解析と今後の開発、研究計画を立てることを行います。博士に進学希望の人は、南極における本格的な開発・研究にとりくむことになります。2m赤外線望遠鏡の建設が最も重要な課題となります。南極に行ってみたい人はチャンスです。もちろん、この開発に携わる人が全員、南極に行かされるわけではありません。希望者だけです。南極観測は南極の夏期の4ヶ月または越冬の14ヶ月が単位となります。すでに希望調査も始めています。

なお、他大学で修士課程を修了した人、修了予定の人は博士後期3年課程に編入することも可能です。この場合、2月初旬に行われる天文学専攻の修士論文発表会で発表してもらい、審査を受けることになります。このような進学も歓迎します。具体的な手続きについては問い合わせください。

開発、観測のいずれを選んだ場合でも、具体的な研究テーマは皆さんと議論しながら決めていきます。自分自身の向き、不向きというのはなかなかわからないものです。また、入学前の興味も狭く、勉強してみると、いろいろなテーマに興味がわいてきます。入学前は研究テーマにあまりこだわらない方が良いでしょう。修士入学後の半年間にさまざまな勉強を通じて、自分の資質、興味を見極めていき、修士1年の後期に具体的な開発・研究テーマを決定します。

完成したMOIRCS





製作中のMOIRCS