11 制動輻射(Bremsstrahlung)

制動輻射は電子が原子核によるクーロン場中を加速度運動するのに伴って放射されるものである。

電荷 $ Z e$ の原子核に初速度 $ v$ 、 衝突パラメータ $ b$ で衝突する電子を考える。 電子の受ける加速度が

$\displaystyle a \sim \frac{Z e^2}{mb^2}
$

で与えられ、実質的な衝突時間が

$\displaystyle t_{\rm coll} \sim \frac{b}{v}
$

で与えられるとすれば、 Larmor の公式を用いて、 一個の電子が電荷 $ Z e$ の原子核との衝突で発せられるエネルギー量は、

$\displaystyle \Delta W(b) =P\,t_{\rm coll} \sim \frac{e^2}{6\pi \vepsilon_0 c^3...
...{mb^2}\right)^2 \frac{b}{v} = \frac{e^6 Z^2}{6\pi \vepsilon_0 c^3 m^2 v} b^{-3}$ (60)

と書ける。 従って、 電子の流束を $ N_e v$ として、 それと衝突する原子核の数密度を $ N_Z$ とすれば、 単位時間単位立体角当たりに発せられるエネルギー量は

$\displaystyle \di{P}{V}$ $\displaystyle \sim N_z N_e v \int_{b_{\rm min}}^\infty \Delta W(b) \, 2\pi b\, db$    
  $\displaystyle \sim \frac{e^6 Z^2 N_Z N_e}{6\pi \vepsilon_0 c^3 m^2} 2\pi \int_{...
...}{6\pi \vepsilon_0 c^3 m^2} 2\pi \left[-\frac{1}{b}\right]_{b_{\rm min}}^\infty$    
  $\displaystyle =\frac{1}{3} \frac{e^6}{\vepsilon_0 m^2 c^3 b_{\rm min}} N_e N_Z Z^2$ (61)

で与えられる。 最小の衝突パラメータ $ b_{\rm min}$ が量子力学的な不確定性原理から決まるとすれば、

$\displaystyle b_{\rm min} \sim \frac{\hbar}{mv}
$

として、 これを代入して

$\displaystyle \di{P}{V}$ $\displaystyle \sim \frac{1}{3} \frac{e^6}{\vepsilon_0 m^2 c^3 b_{\rm min}} N_e ...
...ight)^3 \left(\frac{\hbar}{mv}\right)^2\left(\frac{1}{2}mv^2\right)vN_e N_Z Z^2$    
  $\displaystyle =\frac{8\pi}{3} \left(4\pi \vepsilon_0\right)^2 \alpha^3 \lambda_{\rm rD}^2 W v N_e N_Z Z^2$ (62)

を得る。 ここで

$\displaystyle W = \frac{1}{2}mv^2,\qquad
\lambda_{\rm eD} = \frac{\hbar}{mv}\,\hbox{:de Broglie 波長}
$

である。

より詳しい計算の結果は、 ガウント因子(Gaunt factor) $ g_{B}$ を導入して、

$\displaystyle \di{P}{V} =\frac{16\pi}{3\sqrt{3}} \left(4\pi \vepsilon_0\right)^2 g_B \alpha^3 \lambda_{\rm eD}^2 W v N_e N_Z Z^2$ (63)

で与えられる。 ここで $ g_B \sim 1$である。

fat-cat 平成16年11月29日